癌の宣告

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庭の水仙です

私が初めて胃癌と宣告されたのは、

まだ40代半ばでした。

 

そんな頃は、たぶん誰でも、

自分の人生はいつか限りがあることは

理屈として、頭の中では分かっていても

自分に訪れる死はずっとずっと先で、想像もつかないし、考えたこともない。

まだ、私の番じゃない。

誰にでも平等に訪れるのにね、すべての人に。

だけど、しばらくはまだまだこのたわいのない日常がずっとずっと続いていくだろう。

歳をとってからの問題だと思っているのです。

私もそうでした。

 

だけど、がんを宣告されたとたん

急に自分の死が、目の前に現実として立ちふさがり、

この先、思い描いていた未来が閉ざされたような絶望感に襲われます。

 

その頃私には小さい子供が2人いたし

夫は末期の肺がんでした。

おまけに私は、現職で責任のある仕事についていました。

 

この頃はそういったまわりの大きな課題やら心配があって、

その対処について考えるのに精いっぱい。

 

自分の病のことばかりに没頭していられない。

どうしたら、子供を守れるのか…。

夫の病気のこれからの看護は…??

両親は?仕事は…??

 

とりあえず 目の前のことだけ見ていた。

次々と襲い掛かる、過酷な現実を

一つ一つ片づけていくだけでした。

いえ、片づけるというより、やり過ごしてきただけかもしれない。

溺れながら、泳ぐ人のように…。

他の人から見たら、よく乗り越えてきたねって言われることも多いけれど

そんなに器用に乗り越えてきたわけじゃあない。

 

 

そうやって19年。

いろいろなことがあって19年。 

何とか、これまで運よく再発もなく、体力は随分落ちたけれど

QOLは 若い頃思い描いていた19年とは全く違うものになったけれど

それはそれで、

今のすべての私を作っているのだと思っています。

それも私の人生。

 

だけど今回、

また宣告されてしまいました。

さて、今回は、

ちょっと油断していた。

死と向き合うことに…

もう一度ちゃんと向き合って、

真面目に 現実のこととして、 もしかしたら近い未来かも知れないから。

限りある人生を

やさしく穏やかに生きていきたいと思います。

 

今回の私には

私を必要としている守るべき子供や、夫や両親、仕事といったしがらみがない。

みんな卒業したよ。

心残りは、猫ぐらいかな? まぁ、いざとなったら子供の誰かがなんとかしてくれるよね。

 

そう思うと、 …幸運かもしれない。

ここまで、みんな片付ける時間を、神様は私にくださった。

 

今は、

そう、じっくりと自分のことを考えていけるのだから…。